和食料理人・西本さんに、仕事中何を考え、どう工夫しているのか、1時間お話をうかがいました。
仕事の基本的な流れから始まり、技を磨くなかで、何を考え、どう工夫してきたのか語られていきます。全6回です。

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仕事は、掃除から始まります。その後、限られた時間のなかで、その日使うものの仕込みをしていきます。昼営業が始まると、仕込み、営業、調理の3つが同時 に行われます。限りある頭のリソースがそれぞれに配分されるため、頭への負荷がとても高まります。昼営業が終わった後も仕込みは続きますが、夜営業の前ま でに終了します。夜営業は、頭のリソースを接客と調理に集中配分します。こうした流れのなかで、時間通りに腕を発揮し、段取りを飛ばさずスムーズに進めます。

羽田野

1時間お話を聞きいていきます。仕事をしているとき、料理するとき、いろんな状況や場面があると思うんですが、どんなことを頭で考えるのか、どういうふうにやっていくのか、聞いていきたいと思います。

羽田野

まず、西本さんがやっていることのなかで、西本さんの仕事、作業、調理を考えるときに、一番最初はなにになる?たとえば注文うける、料理の現場、営業時間で料理するってのもそうだと思うけど、仕込みとか、準備とかあると思う。仕事をはじめるにあたって一日の一番はじめは?

西本

はじめは、そうだね。掃除だろうね。掃除からはじめて、それから今度は仕込みに入っていく。たとえば、その日に使うダシを準備するとか、蒸し物するときのために蒸し缶に蒸し物の準備したり、火をかけたりとか、まぁいまはここは寿司屋だから魚が多くて、そうすると魚の処理に入っていく。

羽田野

この順番はだれがやってもこういう順番になるの?

西本

基本的にはこういう順番になっていくと思う。

羽田野

まずはダシ。ダシが一番時間かかる?

西本

ダシはそうだね、時間をかけているかな。おれはかけてる。

羽田野

かけている。かかる部分とかける部分がある。

西本

人によっては15-6分でできたりするけど、ぼくは1時間くらい。

羽田野

3倍とか4倍くらいかけてる。普通は15分くらい、誰がやってもかかる。西本さんは1時間くらい。それから、蒸し物。蒸し缶に火を入れるっていうのは。

西本

蒸し器を準備してあっためて。あとはお湯をわかして、茹でるものをすぐに茹でれるように。あとは寿司屋なんでお米をといでおくとか。お米とぐのもお米を洗って、30分はお水に浸して。そういうことをして、今度ざるにあげて、水切りを15分くらい。それくらい時間かかる。すぐには炊けないからね。

羽田野

洗ってから1時間後。

西本

炊くのはね。そういうの逆算して、なにからやっていけばいいかを判断する。

羽田野

日によって順番は変わる?

西本

変わらないね。たとえば忙しかったら、出勤時間がかわるだけ。順番は変えないように。

羽田野

この時間は一緒で、そこは圧縮しない。魚は届いているの?

西本

まだだね。こういうことが終わるころに届く。むしろ、届く前に終わらせておく。

羽田野

届く前に終わらせて、届いたら仕込みに?

西本

そこから魚を仕込みをして、そこからお昼の営業。

羽田野

お昼のあとはまたなにか仕込みをする。同じ流れで?

西本

営業しながら魚の仕込みしているから、営業終わっても魚の仕込みして、それが終わったら夜の仕込み。茶碗蒸しとか。

羽田野

仕込みが営業前から営業中まで続くわけじゃない。営業中にも仕込みすると、やってる最中に注文が入ることもある。するとこの流れが一旦止まる。戻るときに、止まったのはどう覚えておくの?

西本

戻るとき。どうだろうな、流れの中でだいたいこれやってこれやってって最初から最後まで組んでるからね。

羽田野

流れがあって、組んでるのがあるんだ。

西本

そこの続きから。

羽田野

どこで止まったか忘れない?

西本

忘れない忘れない。だいたいその日にやる仕込みって前の日から二人で打ち合わせしているから。

羽田野

前日の打ち合わせがある。大将と話をして、こういうふうにやろうって。この流れはいつぐらいからしっかりしたというか、毎回同じような流れに?

西本

だいたい、前にいた店もそうだけど、基本的にこんな流れなんじゃないかな。入ったときからこう。

羽田野

およそどの店でもこの流れ?

西本

だいたいそうなんじゃないかな。

羽田野

店が変わったからって仕込みの順番とかが劇的に変わったりしない。

西本

ポジションによりけりだね。2人しかいなから、1人のやることの量が当然増えてくる。どれだけ短時間で段取りよく終わらせるか考えるから、自由に組んでいけるけど、何人も職人いるようなところだと、自分の役割がある。役割が割り振りされる。人が増えるとそれが細分化される。たとえばこの人はずっと野菜中心とか、この人魚やっていくとか煮物やっていくとか。そんなふうに。

羽田野

分業するんだね。今のところは二人だから西本さんがやっているけど、大きくすると分業していく。掃除も大事なんだろうけど、仕込みって大きな役割で。営業中ずっと続いていくんだね。

西本

夜の営業前にはだいたい終わっている。ほんとうはね、仕込みなしで営業に集中したほうがいいんだろうけど、二人でやってるし、回らんし、お昼は若干リーズナブルなんでご了承くださいと。夜となるとしっかりお値段もらうので、いつでもお客さんに対応できるように、仕込みをしない。

羽田野

対応できる余地を残している。昼はお値段との兼ね合いもあり。仕込みと調理と。接客も入る。

西本

そうだね。カウンターだから入るね。

羽田野

調理をやりながら接客をするとか、話しながらやるってことについては、さっきと同じように途中でわからなくなるとか忘れるとか起こらない?

西本

なんだろうな、あるね。あんまりにもバタバタして話してたりすると、「あれ?」っていうのがちょこちょこあるけど、慣れてくるとすぐに思い出せるっていうか。「そうだそうだ」って。

羽田野

思い出しやすさが違ってくるんだね。

西本

あとは忘れないように、注文うけているもの、今はあったかいもの作ってたりするんだけど、お皿をばーって並べとく。ふっと見たときにお皿があれば、「あ、これが通ってるな」ってわかる。最初に用意しておく。