コンダクト・スキルの使用の特徴から、選手をブルー、グリーン、オレンジの3クラスに分けています。それぞれの特徴を、以下のようなポイントから解説していきます。
ページの左側には調査からわかったコンダクト・スキルの使用度のグラフを示しています。右側には各クラスの解説を示しています。
ざっと知りたい方は、「よく使うコンダクト・スキル」までお読みください。さらに詳しく知りたい方は、「利用可能なワーキングメモリの量」以降もお読みください。
特徴と傾向
コンダクト・スキルの使用度(平均値)のグラフ
・羽田野・菊池(2018a, b)から作成
・「1全く行わない」〜「5.常に行う」で選手が回答
- ブルークラスの選手は、コンダクト・スキルをそれほど意識的に使わない
- グリーンクラスの選手は、情報の制御とミスの制御をよく使用する。時間の制御は、ブルークラスの選手とあまり変わらない
- オレンジクラスの選手は、情報の制御と時間の制御をよく使用する。ミスの制御は、ブルークラスの選手とあまり変わらない
職種の技能の水準
(Skill Level)
- その職種の技能の水準
- ブルーは、初心者〜敢闘賞未満の水準
- グリーンは、敢闘賞〜メダル未満の水準
- オレンジは、メダル以上の水準
目標
(Target)
- 選手が達成を目指す目標
重視するもの
(Focus)
- 目標を達成するために最も優先すること
よく使うコンダクト・スキル(Conducting Skills)
- 何らかの作業を行う際、自分の認知、行動、感情の働きを指揮するためのスキル
- 情報の制御、時間の制御、ミスの制御の3種類
- 3種類それぞれに、モニタリング(作業の状況や自分の状態を観察)と、コーピング(作業の効率化、問題のリカバリ、解決)がある
↓さらに詳しく知りたい方は、以下もお読みください
利用可能なワーキングメモリの量(Available Working Memory Capacity)
- ワーキングメモリを、どのくらい自由に使えるか
- 道具や身体の動かし方を考える、作業の段取りを組むなどの頭の作業は、ワーキングメモリを使って行う
- 頭の作業の認知負荷が高いと自由に使えるワーキングメモリの量は減り、コンダクト・スキルをあまり使えない。
認知負荷
(Cognitive Load)
- 頭の作業を行うときにかかる負担のこと
- 主な認知負荷は3種類。1つ目は競技課題の要素や工程の量、複雑さなどといった競技課題の認知負荷。2つ目は作業時間から生まれる時間負荷。3つ目は作業中のミスから生まれるミス負荷。
- その他、作業する場所から生まれる負荷、その場にいる観客などの人から生まれる負荷もある
専門的な知識の量
(Domain specific Knowledge)
- その職種に必要な知識
- 例えば工具、部材、機械の特徴や扱い方。作業の仕方
- 作業中に起こりやすいミス、気をつけるポイント、速くするために必要なことや正確にするために必要なことなども当てはまる。
「もし〜なら」パターンの豊富さ(If-then pattern)
- 例えば「作業ミスを見つけたら、一度立ち止まって冷静に分析をする」のように、ある状況になったらこう対処するというパターン
- どんな状況でも臨機応変に対応できる人は、このパターンを豊富にもっている
意識しないで出来ること(Automatized Skills)
- 例えば初心者は機械の使い方や工程の進め方を、思い出しながら行う。しかし繰り返し訓練すると、意識しないでも自動的にできるようになる。自動化とも呼ばれる
- 自動化した技能や知識、パターンは、認知負荷にならない。自動化した技能が増えるほど、ワーキングメモリを自由に使えるようになる。