調理は目に見えない部分でいろいろな予想外があり、失敗はつきものです。天候や魚量などコントロールが難しいものもあれば、あしの早さなどのように知識が増えるにしたがってコントロールできるようになるものもあります。失敗のデータベースが増え、細かな調理技術が積み上がることで、予想外の衝撃は吸収され、お客さんに失敗をお届けしなくて済むようになります。

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羽田野
いまも起こる?
西本
ならないとね。まだ独立とか考えてないけど、仮にするとしたら、自分はなんの資金源もないし、カウンターでやる方が、人数少なくてできたりとか。狭いスペースでできた起こるよ。いろんな予想外。具体的にって思いつかんけど、お、そうくるかって。り。少ないコストでできるのがカウンター形式。カウンターでやる以上これがないと成立しない。予想外のことが起こってくるっていうか。それでも慌てずにこなしていけるようじゃないとダメじゃないか。
羽田野
お客さんの反応で。
西本
そうそう。
羽田野
料理に関しては予想外は起こらない?
西本
まぁたとえば天気が悪くて、魚こない。ほんとはこの料理仕込んでないといけなかったけど、築地にない。これないですっていわないといけない。
羽田野
仕入れに左右される。
西本
仕入れに左右される。自然には勝てないし。やっぱり福島があって、常磐のあのあたりの魚ほとんどだめですと(2014年当時)。そうなると、そこで買ってた人がみんな買うじゃん。魚の数も減るし、減るってことは値段が上がる。いま大変。
羽田野
漁場がつかえなくなることで値段が上がるんだね。どっちかっていうと自分がやってることじゃなくて、市場で取引しているもので値段は変わる。お客さんとか自然とか、自分の外側にあるものに関して予想外が起こる。調理で予想外がだいたい起こらなくなったのはいつぐらい?
西本
どうだろうな。いつぐらいからかな。あー、ごく最近かな。アメリカでも結構起こったし。今の店からだね。
羽田野
いまの店から余裕ができた?
西本
余裕ができてるわけじゃないんだけど、なんだ?まぁ、慣れてきたんだな。小慣れてきたんだな。たぶん。
羽田野
できることに関して小慣れてきた。
西本
まだまだなんで、やっぱり。
羽田野
伸ばしていく部分が新しくいろいろあるんだね。
西本
たとえば仕込んでいたのが、思ったより足が早くて、もうこれ使えんって。あれっていう。いまはもうないけど。
羽田野
仕込んだのに、使えない。
西本
使えなくなってたとか、思ったより味が入ってねーとか。あれーって。特にアメリカで一人。アドバイスくれる人誰もいなかった。
羽田野
そこで自分で考えたり判断したり。
西本
そうそう。「ああもっと濃くしないといけなかった」とか。
羽田野
いま調理している最中に、調理を失敗するってある?
西本
あんまりないけどね、いまは。自分がやってる範囲では。まぁあるよ多少は。多少はあるんだけど、ほぼできるやり方がわかってきたかと。なんとか。
羽田野
失敗がお客さんまで届かないようになった。
西本
そうそう届かない。前は作り直しだよね。そうすると時間もかかる。
羽田野
失敗しないのも大事だけど、失敗が最終的なところで影響をださないことも大事。
西本
だしたらダメ。
羽田野
フォローの仕方はどうやって?
西本
フォローの仕方?そういうときは、待っていただくか、もういいよっていわれるか、代わりのものを出すか。早く出せるやつ。
羽田野
どんな失敗がある?
西本
たとえば焦げるとか。あとはなんだろうな。茶碗蒸しに「す」が入ってしまったとか。プツプツのやつ。
羽田野
あれは入ってはいけないものなんだね。家で作る茶碗蒸しには入ってるから気にしたことなかった。
西本
ぼくらは綺麗にしないと。お金いただくんで。
羽田野
刺身で失敗はある?
西本
あるよやっぱり。
羽田野
どんなのが失敗にあたるの?
西本
たとえば骨が取りきれないとか。厳密なことをいえば、ただ切っているようで実はちゃんとルールがあったり、細かいこと言えば切り方があるわけで、それで食感が全然変わってきたり。
羽田野
この切り方のルールは?
西本
魚っていうのは筋肉質。筋肉ってのは繊維でできているもので。繊維を断ち切るように切るのか、沿って切るのかで舌の上での感じ方が違う。基本的には断ち切る。じゃないと噛みきれないとかなるから。
羽田野
繊維が残ると噛みきれない。
西本
イカだったりすると、イカは一番甘みを感じるのは中心部分。側(がわ)じゃなくて中。丸の輪の中。ここが一番味を濃い目に感じる。ってことはこの面積が舌にいっぱい当たる方が甘く感じる。
そうするとここもしっかり包丁をいれてあげることができるか。そういうことするために切れる包丁じゃなくちゃいけない。道具っていうのが。これはもう一番最初にやることじゃない?
羽田野
やってた?
西本
やってた。チェックもされるし。ちゃんと切れるか。捨てられたこともあるし。
羽田野
包丁を?道具に関しては最初から自分で選んだ?
西本
最初は頂いた。わからないから。頂いたときに、それですごく興味をもった。言い方危ないけど刃物が好きで、だからのめり込んで。いまは自分で種類選ぶし。