アカギさんに、花火師が花火を学ぶプロセスと、その中の負荷についてお話を伺いました。1回目は、花火の玉を「作る→打ち上げる→省察する」プロセスです。そこから見えるのは、時間的に距離のある「作る」と「打ち上げる」を意識的につなげることが重要性だということです。
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羽田野
1時間くらい、仕事の中で花火師としてどういうキャリアを歩いてきて、どういうふうに考えてきた、技術を発展してきたかについてきいていきます。
大きくわかれて、最初に、花火師って何をする仕事なのか、中身をざっとでいいからおきかせいただいて、その中で認知不可っていうのは頭に負担がかかって間違って判断。どういう場合でも認知負荷がかかりやすい。
そういう条件の中で、どういう対処をしてきたのかとうかがえれば。仕事の入り口と出口ですが、まずどういう仕事の仕方で花火師をされていたんですか?
アカギ
まず最初は、夏休みのアルバイト。3ヶ月間だけっていう形でやり始めたのが最初で。
羽田野
まず最初は、夏休みのアルバイト。3ヶ月間だけっていう形でやり始めたのが最初で。
アカギ
仕事の工程のお話をすればいいのかな?まず最初は、花火師さんは何をするかというと、要は花火の打ち上げの企画、プロデュース、打ち上げ、後処理、営業、なんかも全部はするんですけど、ただ最初のアルバイトのときには、メインの打ち上げの準備。
羽田野
打ち上げの準備。
アカギ
そうです。と、あと片付け。
羽田野
ここが最初の入口。実際には打ち上げの準備の手伝いというのは、どんなことを?
アカギ
まず、花火の仕込みというのをやります。花火は丸いのをイメージすると思うんですけど、この花火は、これだけだと、ただのでっかい、ボーンって輪が上空で開くだけなので、この玉に、色々なパーツをくっつける作業をします。火薬ですね。火薬のパーツを。いわゆる星って呼ばれる、ちっちゃい丸い玉とか、細長い縦のやつとか。
羽田野
丸いのだけじゃないんですね。
アカギ
うん。音の出るやつとか。要はエフェクト、パチパチパチパチってなるやつとか、シューってなるやつとか、色々種類があって、大きな玉の、いわゆる玉名(ギョクメイ)っていうんですけど、シダレヤナギだとか、サンリンギクとか。
羽田野
花火大会で聞くような名前ですね。
アカギ
そうです。なんとかボタンとか。そいういう種類があって、その色と形に合うようなパーツをくっつけていくわけですね。よく、ボン、ヒュ〜〜〜、ドーーンってあるじゃないですか。あのヒュ〜〜〜は、くっつけてるんです。
羽田野
自然に出てる音じゃないんですね。じゃあ、組み込むパーツによって変わってくるんですか。
アカギ
そうです。三秒点滅とか、五秒点滅とか。
羽田野
プログラミングするみたいな感じですね。
アカギ
そうですね。でもだいたいセットみたいな形できまっててこれにはこれって。あとは花火師さんの感覚で。紅点(ベニテン)、赤い点滅がいいのか、青い点滅青点がいいのかとか。そこら辺は感覚で変えてったりとかしますけど、大体のセットは決まっている。
羽田野
音と形のセットみたいなのが、こうしたいなら、だいたいこうできますよって。それが基本セットみたいな。それに紅点とか青点とか色々
アカギ
好きな色をとか、好きな長さをとか
羽田野
花火師さんが考えるんですか?それともそういうオーダーが入る?
アカギ
アルバイトのときはオーダーが入るんですけど、慣れてくると何発作っといてって言われるんで、じゃあこれはこっち使おうかなって
羽田野
細かい指定が入ってるオーダー。慣れてくると玉自体作ってあれば中身変えていいって。こっからここまで移るのはどのくらいの時間かかりました?
アカギ
どのくらいかなぁ。まぁでも一年たったら、私はもうやっちゃってましたけど。
羽田野
一年後もバイト。最初の三ヶ月夏休みで。次の夏にはもう何発やっといてって。任せられる基準みたいなのがあるんですかね。
アカギ
見てて。打ち上げとかで上げてて見てるじゃないですか。こういう感じだなって頭の中でイメージできるかどうかを、会話の中で、「こいつはもう大丈夫だな」とか。
羽田野
紅点がいいとか青点がいいとか。パーツの段階ではパーツでしかない。打ち上げた時のひゅーから始まるのをどう広がっていくかをイメージできるか。それを探る手段は、実際に見る、たまたまじゃないってのを見るのも必要なのかもしれない。イメージを掴めてるなって。
アカギ
上げるのみて、まかしたはいいけど、なんだこりゃってのはたまにあるから。「誰が作ったんだ。やつはまだダメだな」とかね。
羽田野
作ったのを見られる。
アカギ
ダメだなってなると、全部細かくオーダーが来る。
羽田野
ダメだと、細かいオーダーに戻る。最初雑なオーダーで後で細かくなるっていうイメージがあるんです。例えば人参切っとけとか。でも逆というか。最初細かくパーツの指定があるけど、慣れてくるとあんまりになる。そういうふうに任されていく。作業の内容はオーダーが来たり、玉を作ってってのもある。来たものに対して、基本セットプラス、自分の打ち上げイメージに合うような星をやっていく。このイメージってどういうふうにできていくんですか?打ち上げるまではわからないんですか?
アカギ
パーツに名前が書いてあるので、作ってるときに名前はわかる。これとこれの組み合わせだなって、実際打ち上げのときに自分でみて、こんな感じかってイメージできる。
羽田野
入れたパーツを自分が覚えてない花火師さんとかもいますか?
アカギ
まぁいるでしょうね。
羽田野
入れたパーツがあって、それがどう上がったかを見て、そこのつながりが見えてくる。こういう入れ方をしたから、こう上がる。丸いの平面じゃなくて立体。立体の図ってどのくらいはっきりとパーツを入れてる段階でわかります?
アカギ
筒があるでしょ。こっからヒューパンってあがります。上がるときに一緒に横に出るやつがあるんですよ。で、要はしゅん、ひゅーって上がってる間に下で出ているのとかあるんですけど、基本的には、ひゅーってやつは墨って言うんですけど。こっちが星なんですよ。要は丸い玉に入ってる、丸の中にまたちっちゃい丸が入っている。それを外にくっつけたりすると、出てきたりとか、これがチカチカするとか、すごい光るのかとか。光の強弱とか。これがワンセットなわけですよね。これも色々なエフェクトがありますけど、どれで上がるのかなってのをその感じでイメージする。
羽田野
点じゃないんですね。動画で再生される
アカギ
あー、動画ですね。
羽田野
動画で頭の中で再生されるようになるまでってある程度時間かかるものですか?
アカギ
一回やって出来る人は出来るだろうけど。あーこんな感じなのかって。何種類か作っていれば一回でもイメージできるだろうけど。
羽田野
上げる本番までわからないんですよね。試し上げとかないんですよね。
アカギ
あーないですね。
羽田野
組んでる段階で、いかに鮮明にイメージできるかが、やりたいことを実現するのにつながってくるんですね。複雑なものを作るってなると、上げてみないとわからないのに、上げた時に複雑なものになっていないこともあり得るのかなと。どのくらい複雑なものを作るっていうのが見えますか。均等に放射線状に上がる場合と、よくわからないけど複雑なものを作るためにイメージの鮮度や精度が違うのかなと思うんですが。
アカギ
たぶんね、この玉自体は作ったことないというか、花火師でも作る人と上げる人がいて、基本的には私上げる人なので、玉自体は作ったことないんですけど、芯がいっぱいあると八重芯だとか。丸いのを重ねていくんですね。それがバーンって放射線状に均等に左右上下に開くんですけど、その芯をどれだけ多くするのかっていうのと。あとは文字作ったりする。あと型物(カタモノ)っていってドラえもんとかキティちゃんとか。そういうのは、結構めんどくさいですね。