大人になってもTVゲームを楽しんでいる人はたくさんいるようです。ぼくもその1人で、今でも、1日1時間くらいやることがあります。半分は仕事、半分は楽しみのためです。例えば、一見無駄なことに人のエネルギーを注ぎ続けさせるのはどんな仕組みなのかなど、支援に役立つ知恵があちこちにうまっています。なので、仕事のアイディアが得られたりします。

最近では、ゲームが単なる暇つぶしや現実逃避以上の力を持つものと考え、現実の世界をより豊かにすることを目指している人たちがいます。

AR(現実代替)とよばれる分野のゲームです。

ゲームデザイナーのジェイン・マクゴニガルは、ARゲームとは「反逃避主義者のゲームであり、人類が直面している喫緊の課題に対する新しい解決策を生み出そうとするもの」と考えています。ずいぶん壮大ですが、ゲームが現実をよくする力があるという考えもあるということでしょう。

現実をゲームのように楽しみ、ついでに問題も解決する。そのための枠組みの1例として、全てゲームに共通する以下の4つの特徴をあげています。
1.ゴールがある(ボスを倒すなど)
2.ルールがある(成功までのやり方がある程度はっきりしている)
3.フィードバックがわかりやすい(得点やレベルなど)
4.自発的な参加(どの課題をやるか選べる)
この4つのバランスが上手くとれていると、よいゲームといえそうです。

そして、人の行動を引き出し、続けさせる仕組みともなるのです。例えば大人気のモンスターハンターはこの4つが見事にあてはまります。考えてみると、学校の勉強や仕事は、この4つと全て逆なことが多い気がします。

だとすれば、もしゲームをやめさせたいなら、”仕事化”してみるといいかもしれません。例えば、1時間以内にボスを倒せないならご飯抜きなどの条件をこちらから出してみるのはどうでしょう。そうすると、そのうちやる気をなくしていくかもしれません。ムキになってやる気をだすかもしれませんが。。。

ぼくが働いている発達障がいのある方への就労支援機関でも、ゲームの要素や仕組みを活用しています。例えば、プログラム内で
出席するたびに昇進(例:平社員→係長→課長)
新しいことを覚えたりできたりしたら、ポイントを加算
一定のポイントに達したら、レベルアップ
などの仕組みを取り入れています。

これらは、一見子どもだましのように思えます。ただその一方で、支援機関の利用者にはゲームになじみ深い方々が多いため、こういった仕組みでモチベーションが高まったり、成長が実感できたりもするようです。他にも、例えば成長のプロセスや小さな目標設定の大切さを伝えるときに、「いきなりバラモスと戦っても絶対に勝てないですよね。まずはスライムからです」といったたとえ話をよくつかいます。一般的にはたとえ話を理解しづらいといわれる発達障がいの方ですが、自分が知っているものをベースにしたたとえ話は、とてもよく理解してくれると感じます。

また、引きこもりの元凶のようにいわれるゲームですが、ゲームで自分が成長した、と感じる当事者の方々もいるようです。「ネットゲームがあったおかげで、チームワークの大切さを学べた」「人とコミュニケーションをする、いい練習になった」などの感想を耳にします。もちろん全員がそう感じるわけではないでしょう。現実逃避の面があるもの確かです。しかし、社会性やスキル学習を促すポテンシャルを、ゲームが持っているともいえるのではないでしょうか。

もっとも、ゲームには中毒性などの問題があります。その中毒性がゆえに、「ゲームはけしからん」となっている面もあります。ゲームにかぎらず、やりすぎればさまざまな問題が生じます。健康によいとされるスポーツでも、やりすぎればスポーツ障害につながります。では、ゲームを何時間以上やるとよくないのか、明確な科学的基準はないようですが、下記のラインは参考になると思います。

川島教授(脳トレの監修者)は、1日1時間に制限
ゲーマーが後悔する境目は、週20時間以上

実際にゲームそのものが悪いという科学的データは少ないようです(例えばゲーム脳についての批判)。その一方で、ゲームがもつプラスの影響についてはいろいろなデータが示されています。このテーマについては、そのうち取り扱おうと思います。

ゲームに好意的であれ否定的であれ、ゲームの存在は多くの人にとって無視できない影響をもっていると思います。であれば、それとどうつき合っていくか、どうかかわると我々の生活をより豊かにできるのかを考えていくのも面白いな、と感じます。

見出しと内容がかなりずれましたが、ゲームのアイディアを生活のなかにいかしてみると、少しだけ生活が楽しく豊かになりそうです。

ぼくの場合は、やりたくないことをやるときにポイントがたまるという設定にし、一定以上たまるとレベルアップすると決めてます。はたからみるとちょっと痛いですかね。別にレベルアップしても特にごほうびとかはありませんが、なんとなく、充実した気持ちになります。そんなことの積み重ねがちょっと豊かな生活につながりそうです。


参考にした文献やサイト
・幸せな未来は「ゲーム」が創る  ジェイン・マクゴニガル著 早川書房
・「おもしろい」のゲームデザイン ラフ・コスター著     オライリー・ジャパン
・ゲーミフィケーション      井上 明人著       NHK出版
・ゲームの仕組みを心理学的視点から分析したMichael Wu, Ph.D. の記事(英語です)