中原一行 | 4 自分を細胞分裂させる

多くの仕事を引き受けると、一人ではさばききれないレベルの負荷かかり、負荷を分散する必要にせまられます。しかし、そうした負荷は、「やり方の細胞分裂」を促す場合もあります。中原さんは、自分を2つに細胞分裂させ、負荷を分散しました。1つは、自分の中を分ける方法です。自分の中に幾つか役割を作り、やることの切り替えに関する負荷を分散します。もう1つは、自分の外へ分ける方法です。自分だけで仕事を抱えず、人に任せます。自分のやり方をこのように変えることができたのは、今までと違うやり方をしても、自分の期待通りか、それ以上の成果が得られると理解したことが、重要だったといえます。

naka_4

前回までの一連の流れは、おそらく経験を重ねていく中で、やりとりが蓄積されてできる部分もあると思います。こういうのって、人に教えるときはどうしてます?

ね。どうしようかなー、と。というのも、経験によるところも多いのでなかなか伝えられない。手っ取り早いのは、一緒に打ち合わせいくとか、まずはOJTでこういうことをやってるって見えるところは見せて共有する。その後、あの話の背景としてはこういう知識があって、そういうことがあるから、ああいう発言になったんだよって言葉で説明するし。

一緒にいて、見てもらう。

ほんとはこの辺をなにか図式であったりとかドキュメントとして残していけるといいんだけど。っていうところかな。

色々な基準や、そこに至った背景があるんだろうと思うんですね。たとえば時間の見積もり。「これはこのくらいでできる」っていうのは、作業工程一つ一つの大体の見積もり時間を、直感的にやって、それを積み上げた結果わかることだと思います。経験が少ない人って、この見積もりがわからないので、このくらい?みたいになる。経験がある人ほど、WBSを分割しているし、ここを抜いたらもっと早くなるってわかると思う。でも、何に対してどういう単位で分割するのか、経験の少ない人にはわかりづらい部分もありそうですね。他にも、たとえばRFPってどのくらいかかりますか、とか。案件によって違うんでしょうけど、2日が2週間に伸びる場合、どのタイミングの、どこにアンテナを張っていると、それがわかるのか。

いま話をしてて気づいたのは、時間を見積もるときに、この作業がどのくらい時間かかって、てのは、なんとなく感覚的にはある。エンジニアやってると誰しもある感覚。だけど、新人とか若い人には、ないかもしれない。よくいわれるのは時間を全部つけておけって言われるんだけど、例えば作業するときに、ちょっと面倒だけど一個一個に何分かかってるのか記録してデータとして蓄積しておくと、以後同じような作業が発生した時に、より的確な見積もりができる。それを共有すれば、経験のない人でもある程度見積できるようになるのかもな。

時間感覚を養うのは、一つ一つの作業にかかってる時間の記憶の蓄積だったり。そういう意味でもいいんでしょうね。面談の技術を教える場合も似ています。面談はだいたい1時間やるんですけど、何分ころに何を話してたか、ベテランの人は覚えている。でも、経験が少ない人ほど、覚えていない。そういう意味で、人の話がどのくらい続くと何分か、自分がどのくらい話すと何分か、と把握するのも技術でしょうし。そういうことは、仕事の全体像が見えたりとか、気持ちに余裕ってほどではないにしても、自分を客観的に見るタイミングに至って、はじめてできることかも。中原さんが自分を客観視できるな、引いて見られるなって感覚になったタイミングは、どのくらいの時期からですか?

フリーランスとして複数の案件を回し始めてからかな。職人とマネジャーっていう2つの見方をする必要があって。職人人格で物を作ってて、マネージャー人格でちょっと遅れ気味ですよ、とか。職人とマネジャーがほんとは別の人であれば、マネジャーが現状を把握して、例えばいまちょっと遅れているとかをお客さんと調整して、全体的に遅れてるんですって話をするとかね。マネジャーが作ってる人にどういう状況なのって確認するのは当たり前なので。でも、自分で作って自分でマネジャーやってると、それめんどくさくなって、コミュニケーションが少なくなったりする。そうなったときに、これはよくないなって第三者的な視点で動く必要があって、作ってる人の言い分としてはこうだけど、マネジャーの言い分としてはこうだろうなって。

見てるもう一人がいるんですね。

全体を俯瞰してる人格が。ほんとは時間を分けて作業する、たとえば朝一番早い時間ではマネジャー的に動いて、午前午後は職人として動く。1日のスケジュールで。

1日の中でそれを分ける。

時間帯で、自分の仕事を分ける。

いつぐらいから?

それはいつぐらいからかな。法人にしてぐらいからかな。フリーランスのときから、実験的にはやりはじめてたけどね。自分で全部やらなきゃいけなくない状況って最初はあんまり仕事がないけど、徐々に仕事が増えていくと自分1人では捌ききれなくなってくるので必須になってくる。そのタイミングは、フリーランス1年半くらいかな。それくらいで法人化したので。

法人化して。こういうことを、やらざるを得なくなる。

自分でやろうっていうのを諦める。最初全部自分でやった方が120%くらいでできるって思ってやってたけど、結局抱え込んじゃうと、一人でやると70%くらいしかできない。だったら人にお願いしたほうがいいなと。

その判断に至るためには、無理だなって経験が必要でした?その前の段階の中原さんに話したら、「あそうか」って切り替わりました?

経験がないとなかなかそうならないので。たとえば本読んだり勉強してできるかっていうと、なかなか身にはつかない。

無理だ、と思う経験が必要なことかもしれないですね。失敗じゃないかもしれないけど。

限界をわかったりとか、こうあるべきってのができなくなったタイミングとか。まずは限界のポイントが必ずなにかしらあると思う。

限界のポイントを経験して、一人でやっても70%くらいにしかならない。

だったら、100%を目指すにしても、人にお願いして60%くらいできれば、残りを自分で40%くらいやる方が全然効率がいいし。これが徐々に70:30とか80:20になってくるのが理想かな。

タスク・スイッチング、割り切りですよね。タスクって、一つのタスクもそうですけど、役割によって変わると思うんですね。職人としての人格と、マネジャーとしての人格を、どう切り替えているのか。やり方の一つとして、時間帯で切り替わっていくようにして。そうすることで、切り替えを忘れてしまうとか、どっちかの人格によりすぎるのを仕組みとして防いでいると感じました。