西本さんは、刃物でさばくことが興味の入り口となりました。刃物の理解は、段取りのスムーズさへとつながり、調理の技術に影響します。魚の知識、い い刃物を選ぶ知識があって調理された刺し身は、見た目も舌触りも最高のものです。そういう意味で、刺し身は料理人が持っている専門性の結晶といえます。

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羽田野
のめり込んだきっかけは刃物?
西本
刃物から入ったかもしれない。この仕事はむしろ。刃物使う作業って言ったほうがいいかな。だから日本料理。和食。
羽田野
最初は魚さばく方からだったね。ここが入り口。
西本
魚をさばく、野菜をむく。ああいうものに興味があったのかな。入り口はここだね。一番使うじゃない。中華よりも洋食よりも。種類も何種類も。
羽田野
そうか。刃物の違いがわかるようになったのはいつぐらいから?
西本
思ったより深くて、わかるようになったのはここ1〜2年かな。去年なんか造るところ見に行ったりとか。大阪まで。刃物の歴史調べたりとか。そもそもなんでこんな形になったのか。なんでこれが必要になったのかとか。
羽田野
刃物の目的?
西本
いろんな形、種類があって。たとえば出刃包丁。これが一番歴史が浅い。200何十年か前。これが開発されたのは大阪。なんでかっていうと、大阪湾ではタイがとれた。タイって他の魚よりも骨がしっかりして硬い。ちゃんと切れるような包丁が欲しいってことで考えられた。もともとタイを切るようにできている。
羽田野
はー。じゃタイ用に作られた。
西本
あの太い骨をバサーンって重さでストーンと落とす。刃こぼれしないように。そのためにできた。
羽田野
包丁の知識が増えていくのは自分にとってどんな影響があった?
西本
いまんとこ自己満足だね。よくきかれたときにこたえられるくらいかな。趣味だからね。ほんとはお酒の趣味とかしっかりしていけばいいんだけど飲めないから。いやわかるよ、ある程度仕込みの段階とか米の種類とか。でも自分が味わって飲んでないから説明できない。それよりか刃物のの方がしっかりできる。後輩ができたときアドバイスはしてやれるなって。
羽田野
種類が増えて料理がしやすくなったとかそういうのは?
西本
もちろん。よく切れるにこしたことはない。何回か使って切れなくなるようなものは買わなくなったよ。疲れないとか。持ち手によってタコができやすいとか、重たすぎるとか。そういうものは。
羽田野
こういうのも直接かわからないけど、段取りのスムーズさにつながる?
西本
つながるね。疲れないことでスピードが落ちない。お刺身なんて切れないのでぐちゃぐちゃになってはいけないわけで。スパスパと面が綺麗になっていることが重要で、そうするとそれなりの切れ味が求められる。
羽田野
見た目ではわからないところに違いがでる。
西本
お刺身って一匹の魚からがスタート。あそからがスタート。うろこをバリバリ取ります。そこを失敗したらもうだめ。うろこ残ってたら、ちっちゃいうろこの魚だったら、刺身出たときついてましたってなったらかっこ悪い。そっから始まってる。
羽田野
全身の魚から始まってる。そう考えるようになったタイミング覚えてる?
西本
最初から。うろことらされるのは最初の方やらされることで。口をすっぱく言われた。もっというと魚選ぶときからか。たとえば産地にうちはこだわってて、東京湾でとった白身の魚。他の、たとえば青森とかそういうところとは同じ種類の魚でも違う。
羽田野
魚の種類は一緒でも中身が違う。
西本
産地で。自分好みの魚みつけるところから始めるのかな。
羽田野
それを見分けるわけでしょ?
西本
これは難しい。鮮度はすぐわかるけど、ほんとうに美味しくなる刺身とそうじゃない刺身は難しい。魚屋さんと常にコミュニケーションとることだね。
羽田野
魚屋さんの目利きも。
西本
アドバイスは聞く。産地とか。産地が一番わかりやすい。やっぱり包丁をズッて入れてみないとわからない。
羽田野
切ってみないと。見ただけでは限界がある?
西本
限界がある。
羽田野
そろそろ1時間たちました。話を聞けてよかったです。ありがとうございました。