この記事では、英語をしゃべる練習の負荷を、PARフレームワークを使って分析しました。分析項目をスケーリングした結果、インプット、情報保持のマルチタスク、アウトプットの負荷が特に高いことがわかりました。負荷への認識をアップデートする方法で対応したところ、負荷への負担感は若干ましになりました。また、オンライン英会話のCamblyで実際に会話するとき、発話しながらの構文がしやすくなった、と感じました。

PARフレームワークとは、ものごとを

    • Problem(問題)
    • Action(行動)
    • Result(結果)

にわけて分析するフレームワークです。何に困っていて、解決のために何をして、その結果どうなったか、をシンプルに整理することができます。

何が問題か?

話すことは技能なのでしゃべる練習をしなければ上達しません。そこで「パタプラ」という英語の発音練習をするWebサービスを利用しています。パタプラは学習科学にもとづいた手法で、ベースとなっている記憶理論もとても標準的なものなので、信頼できる方法です。この練習が、しんどいのです。「何をしんどいと感じるのか?」がわかれば、しんどさを軽減できるかもしれません。また、そのしんどさが学習に必要なプロセスなら、忌避感が減るかもしれません。そこで、「何をしんどいと感じるのか?」を認知・身体負荷の点から考えてみたいと思います。

どんな行動をとった?

行動チェーンの分析

まず、パタプラの練習を行動チェーンに分けます。行動チェーンとは、ある行動を認知や行身体のタスクに細かなタスクに分け、どのように繋がっているかを示すものです。認知や身体のタスクとは、ある発言や行動を実行するために必要となる頭や体の作業要素のことです。

パタプラの学習は20分弱の単元に分かれています。各単元では、そのテーマに合わせて最初にネイティブがフレーズをしゃべって、それを文字は見ないで音だけ聞いて、同じように発音し、それを反復します。この流れを認知・身体タスクに分けます。

ひとまずパッと思いつく限りでやってみます。記憶は「記銘→保持→想起」の3つのプロセスですすむため、これを下敷きに考えていきます。

  1. フレーズを音で耳からインプットする
  2. 音の情報から単語を解釈する
  3. チャンクごとに単語を記銘する
  4. わからない場合は音をそのまま音として記銘する
  5. フレーズが終わるまで先行記憶を保持しつつフレーズ中の音を記銘する(マルチタスク)
  6. フレーズが終わったら音声化する
  7. 余力がある場合は、抑揚や発音にも注意を分割する

上記の7つのタスクを1つのプロセスとして、上達のために繰り返します。その中で、以下の修正タスクも行います

  1. 想起し音声化したフレーズが正しいか誤りかの判断
  2. 誤りなら、覚えられていないのか(記銘)、思い出せなかったり思い出したものが違っていたかを判断(想起)
  3. 誤りが記銘なら覚え直す。想起なら知識を修正する、正しく言い直す
  4. 誤りが音声化なら、音声の訂正。発音か、イントネーションか、フレーズの強調箇所か

ここまで分解したものを見てみると、構音や発声が必要となる音声化は身体タスク、それ以外は認知タスクということになります。

 

認知・身体負荷の分析

次に、各タスクの負荷をスケーリングします。スケーリングとは、項目を直感的に例えば5段階などで評価する方法です。厳密ではないですが、目安を得ることができます。目安がない場合と比べて、違いを可視化できます。

認知・身体タスク 負荷(1〜5)
  1. 認知:フレーズを音で耳からインプットする
  2. 認知:音の情報から単語を解釈する
  3. 認知:チャンクごとに単語を記銘する
  4. 認知:わからない場合は音をそのまま音として記憶する
  5. 認知:フレーズが終わるまで先行記憶を保持しつつフレーズ中の音を記銘する(マルチタスク)
  6. 身体:フレーズが終わったら音声化する
  7. 身体:発音を良くしたいという余力がある場合は、音声化の際に抑揚や発音にも注意を分割する
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  1. 認知:想起し音声化したフレーズの正誤判定
  2. 認知:誤りが記銘か、想起かの判断
  3. 認知:誤りが想起→知識を正しく修正。はっきり聞こえていなかった場合、聞こえていたが単語の結びつきを間違えた場合
  4. 身体:誤りが音声化→音声の訂正。発音か、イントネーションか、フレーズの強調箇所か
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5が認知・身体負荷の高いタスクです。「フレーズを音で耳からインプットする」、「フレーズが終わるまで先行記憶を保持しつつフレーズ中の音を記銘する(マルチタスク)」、「フレーズが終わったら音声化する」、「誤りが記銘か、想起かの判断」が負荷の高いタスクとなります。

身体負荷の高いタスクを分析したので、対策を考えていきます。対策は2種類。1つは、それを減らす方法を考えることです。もう1つは、「これはそういうものだな」と認識をアップデートする方法です。

減らす方法

音声情報だけだと、文字をみながらよりも負荷が高いので、文字をみて音をきく、音を出すと負荷下がります。ただ、文字をみることで、記銘しなくても言えてしまうため、記銘することが目的の場合、やや効果が下がる方法です。

認識をアップデートする方法

音声のみでインプットすること、保持しながら記銘するマルチタスク、音声化することは、いずれも実際の会話で起こることです。この負荷が高いとしても、それに慣れなければ、実際に話す場面で役立たないかもしれません。なので、負荷は成長に必要だという視点に注目し、めんどうだという捉え方をアップデートします。このように物事を今までと違う方法で捉え直すことをリフレーミングといいます。ものごとをすぐには変えられないときに使える方法です。

どんな結果となった?

認識をアップデートする方法を選びました。負荷自体は変わらないかもしれませんが、負荷に対する負担感は気持ち変わったかも知れません。

また、オンライン英会話のCamblyで毎週30分、英会話をしているのですが、会話において発話しながらの構文がしやすくなった、と感じました。以前は話している最中に構文ができず、何を言っているのかわからなくなったり、単語や文法が出てきませんでした。この問題が、少しずつ解決しているように思います。