西本稔大 | 5 失敗をお届けしないために

調理は目に見えない部分でいろいろな予想外があり、失敗はつきものです。天候や魚量などコントロールが難しいものもあれば、あしの早さなどのように知識が増えるにしたがってコントロールできるようになるものもあります。失敗のデータベースが増え、細かな調理技術が積み上がることで、予想外の衝撃は吸収され、お客さんに失敗をお届けしなくて済むようになります。

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これを言えるようになるの?

な らないとね。まだ独立とか考えてないけど、仮にするとしたら、自分はなんの資金源もないし、カウンターでやる方が、人数少なくてできたりとか。狭いスペー スでできたり。少ないコストでできるのがカウンター形式。カウンターでやる以上これがないと成立しない。予想外のことが起こってくるっていうか。それでも 慌てずにこなしていけるようじゃないとダメじゃないか。

いまも起こる?

起こるよ。いろんな予想外。具体的にって思いつかんけど、お、そうくるかって。

お客さんの反応で。

そうそう。

料理に関しては予想外は起こらない?

まぁたとえば天気が悪くて、魚こない。ほんとはこの料理仕込んでないといけなかったけど、築地にない。これないですっていわないといけない。

仕入れに左右される。

仕入れに左右される。自然には勝てないし。やっぱり福島があって、常磐のあのあたりの魚ほとんどだめですと。そうなると、そこで買ってた人がみんな買うじゃん。魚の数も減るし、減るってことは値段が上がる。いま大変。

漁場がつかえなくなることで値段が上がるんだね。どっちかっていうと自分がやってることじゃなくて、市場で取引しているもので値段は変わる。お客さんとか自然とか、自分の外側にあるものに関して予想外が起こる。調理で予想外がだいたい起こらなくなったのはいつぐらい?

どうだろうな。いつぐらいからかな。あー、ごく最近かな。アメリカでも結構起こったし。今の店からだね。

いまの店から余裕ができた?

余裕ができてるわけじゃないんだけど、なんだ?まぁ、慣れてきたんだな。小慣れてきたんだな。たぶん。

できることに関して小慣れてきた。

まだまだなんで、やっぱり。

伸ばしていく部分が新しくいろいろあるんだね。

たとえば仕込んでいたのが、思ったより足が早くて、もうこれ使えんって。あれっていう。いまはもうないけど。

仕込んだのに、使えない。

使えなくなってたとか、思ったより味が入ってねーとか。あれーって。特にアメリカで一人。アドバイスくれる人誰もいなかった。

そこで自分で考えたり判断したり。

そうそう。「ああもっと濃くしないといけなかった」とか。

いま調理している最中に、調理を失敗するってある?

あんまりないけどね、いまは。自分がやってる範囲では。まぁあるよ多少は。多少はあるんだけど、ほぼできるやり方がわかってきたかと。なんとか。

失敗がお客さんまで届かないようになった。

そうそう届かない。前は作り直しだよね。そうすると時間もかかる。

失敗しないのも大事だけど、失敗が最終的なところで影響をださないことも大事。

出したらダメ。

フォローの仕方はどうやって?

フォローの仕方?そういうときは、待っていただくか、もういいよっていわれるか、代わりのものを出すか。早く出せるやつ。

どんな失敗がある?

たとえば焦げるとか。あとはなんだろうな。茶碗蒸しに「す」が入ってしまったとか。プツプツのやつ。

あれは入ってはいけないものなんだね。家で作る茶碗蒸しには入ってるから気にしたことなかった。

ぼくらは綺麗にしないと。お金いただくんで。

刺身で失敗はある?

あるよやっぱり。

どんなのが失敗にあたるの?

たとえば骨が取りきれないとか。厳密なことをいえば、ただ切っているようで実はちゃんとルールがあったり、細かいこと言えば切り方があるわけで、それで食感が全然変わってきたり。

この切り方のルールは?

魚っていうのは筋肉質。筋肉ってのは繊維でできているもので。繊維を断ち切るように切るのか、沿って切るのかで舌の上での感じ方が違う。基本的には断ち切る。じゃないと噛みきれないとかなるから。

繊維が残ると噛みきれない。

イカだったりすると、イカは一番甘みを感じるのは中心部分。側(がわ)じゃなくて中。丸の輪の中。ここが一番味を濃い目に感じる。ってことはこの面積が舌にいっぱい当たる方が甘く感じる。そうするとここもしっかり包丁をいれてあげることができるか。そういうことするために切れる包丁じゃなくちゃいけない。道具っていうのが、これはもう一番最初にやることじゃない?

やってた?

やってた。チェックもされるし。ちゃんと切れるか。捨てられたこともあるし。

包丁を?道具に関しては最初から自分で選んだ?

最初は頂いた。わからないから。頂いたときに、それですごく興味をもった。言い方危ないけど刃物が好きで、だからのめり込んで。いまは自分で種類選ぶし。